真似をされてもいいと考えていた野村紘一

野村紘一は超高級マンションの先駆けと言えるベルテシリーズを生み出した人物なのですが、この人の凄いところは自分の手がけた物件のことを包み隠さず公表して、真似されても構わないと考えていたところにあります。超高級マンションの概念がなかった時代に億ションを誕生させた事自体が驚異的なことなのですが、それに加えて大ヒットとなった億ションを同業者が見学に来ても断ることなく、全てを公開したのは並の経営者ではできることではありません。
ここには野村紘一の確かな自信があり、真似をされてもいいとすら考えていたのです。見かけだけを真似して簡単に成功をするようなものではなく、同じようなマンションを作っても同じものができることはないと知っていたからこそ、すべての情報を公開したというわけです。
野村紘一は同じマンションを作ることはないというポリシーを持っていましたから、すでに出来上がったものを真似されようが何も問題ありません。
また、いつまでも同じようなことを繰り返していては取り残されてしまうことを知っていたからこそ、常に新しいマンションづくりに力を入れてきたため情報を公開することができたのです。
理屈としてはそれが正しかったとしても、実際に公開するのは勇気がいることで普通であれば他社の利益になるようなことは避けたいと考えるところですが、野村紘一は意に介さず全てを公開してそれにもかかわらず他の追随を許しませんでした。
その結果として真似されてもいいという考えは間違っていなかったことを証明することになり、野村紘一が手がけた超高級マンションの凄さをさらに浮き立たせることになったのです。
今の厳しい競争社会を勝ち抜くためには、他社が真似できないことをする、あるいは真似をされたところで二番煎じにしかならず競争相手になることにならないものを作り上げることが重要であるということを、まさに体現した一つの事例になったと言えるでしょう。